中学卒業からちょうど10年。と思うと感慨深い。

離れるのが嫌でこの世の終わりみたいに泣いてた卒業から10年と1週間…?くらい経つ日に、他の人と結婚式。

何がどうなるかわからないものだな。

この世の誰が誰を想う気持ちより強いと確信してた。目を閉じて想うだけで涙がでた。どこにいても気配を感じてた。胸の、のどの、真ん中あたりに、ずっとずっと濃厚に感じてた。視界に入ると、同じ空気を吸えると、細胞レベルで幸せだった。ああ生きてるって思った。街中で電車ですれ違うだけの通行人達のことすら心底羨ましくて、カケラも関わらない日が続くことが閉ざされたトンネルみたいに、電波の入らなくなった携帯やパソコンみたいに、苦しいことだった。虚しいことだった。私のこれからの人生は、彼に会えている時間と、次会えるときまでの繋ぎの時間の繰り返しだと思ってた。

日常にいたらできる、鼻をすすってたらティッシュを差し出すとか、醤油をとってあげるとか、そんな些細なことすらもできない。映画みたいな状況下で、彼の為に全力で命を投げ捨てて守れたらどんなにか楽になれるのに、と思ってた。

電車で席を譲るとか、落とした小銭を拾ってあげるとか、そんなレベルでいい。のに。そんなことすらできない。端役にすらなれない。誰かが誰かのために存在できるって、すごいことなんだ。必要とされないならせめてと思うのに、なんにだってなれないんだ。私がいることで幸せに思ってもらえたら死ぬほど嬉しいのに、あまり連絡を取らないほうがいい。迷惑をかけないことしかできない。そんなのが物凄くむなしかった。


書き出すといくらでも当時の感情は溢れてくるけど、こんな真っ直ぐなのか歪んでるのか本物なのかひとりよがりの紛い物なのかよくわからない只激しい感情は、今の私にはない。今の私から今の彼には、たぶん、ない。

完全に手放してから夫と付き合い出したわけではなかったから、ゆるりゆるりと少しずつ少しずつ薄れて、私も彼も月日とともに変わって、気が付いたら目の前にいる彼は私が求めていた人ではなくなっていて、彼を求めていた私もいなくなっていて、

そんな感じで失っていったんだと思う。

あの頃の暴力的な感情が時々騒ぎ出したり、あの感覚をごく稀に夢で感じたり、日常的になんとなく切なくなったりはしているけど。


あんなに苦しくて痛かったのに、失ってしまうと、ああなんて痛気持ちかったというか、楽しかったなというか。

あんな風に自分では操りようもない祈るような泣き喚くような気持ち二度と感じられないんだろうなって。一度も感じない人もたくさんたくさんいると思うから、これをしれてよかったな、学生のうちに、というか。


夫と付き合いだして愛される幸せを知った頃、あんなに見返りのない苦しいだけの片想いをどうして続けられたんだろう?て思ったことがあった。

けど、日常にいないから、飽くこともなかったんだよね。甘美だったね。思春期ではじめて心の誰にも触れられたことのないところに触れられたような気がした人だったから。どうしようもなく特別だった。

この間また会った時、あれ?     この人は、本当に、私が好きだった人かな  ?なんだか仕草がわざとらしいな?なんて、ちぐはぐして、おかしな感じがした。あーーー、待って、なくなっちゃう、て思った。大切にしてた何かが出てった気がした。

けど完全になんとも思わない、他の男友達と一緒、とはまた違うんだね。変に意識して拒否反応もでて迷惑をかけた。


夫と幸せだから10年生きてきて心からよかったけど、彼とのことは、10年前の私に、なんだかちょっと申し訳ない。ごめんね、て思う。こんなんでよかったのかな、て。着地点。